良書紹介――『夜の神々』(松浦光修著)

夜の神々

現在、日本最大の保守系シンクタンクである「日本教育再生機構」。
その一大ネットワークの中心にいるのは、
八面六臂の活躍を続ける「私心無き広告塔」八木秀次先生か。
あるいは、年長者として実証的神道理論で牽引する新田均先生か。

最も重要な思想指導者は、「信仰の人」松浦光修先生であると、私は確信します。
松浦先生は、他の先生方とは違う。違うものを、感じました。


全てが不毛な「つくる会内紛」にあって、私が手にした一番の財産は、
Ozeki氏という論者が繰り返し使われた「信仰」という言葉です。
西尾幹二氏の痴態の原因は、実は「信仰無きアノミーな状態」にあったのではないか。

その後、松浦先生の御厚情から、三冊の著書を手にする機会を得ました。
更に、その中から『夜の神々』を選んで最初に読み始めるという、良い偶然が重なった。
そして本書に、あのOzekiの言われた「信仰」という言葉を見出して、私は「これだ」と思いました。


本書は、感性を持っていない人が読むと、只の散文集、
書き散らしとしか映らないでしょう。

が、分かる人が見れば、各々の散文の行間にある、
松浦先生独特の豊穣に満ちた世界を、感じ取ることが出来ます。

本書の主題は、
「客観性、理性、知性」の「昼の科学」と同じくらい、
「感性、情緒、直感、霊感」の「夜の科学」が大切である、ということです。

これは、合理性と同じく「信仰」が大切であると訴えられ、
唯物思想に傾きがちな現代人に警鐘を鳴らされている、
松浦先生の一貫した持論に通じています。



松浦先生の主な著書は、

学術論文『大国隆正の研究』(かなり難しい)
歴史評論『やまと心のシンフォニー』(本書に近い)
教育評論『いいかげんにしろ日教組』(戦記物に近い)

と、少なめです。
が、売るために量産を続ける「作家的な学者」では無い松浦先生の著書は、
粗製濫造では無いので、どれも密度が濃い。

中でも、漫画本並に一番読み易く、採り上げている分野が多彩なので、
お得感が高いのが『夜の神々』です。
一見簡単な文章でも、良く読み返すと深い意味があったりするので、
入門書として、座右の書として、
手軽に「日本」を感じる一冊として、かなりお勧めだと思います。


勿論、私もまだ本書を殆ど読み解けてはいません。
一冊の本を読み解くということは、物凄く大変なことです。
残りの人生のうちに、大部分を消化することが出来れば、と考えています。


実は私は、本書を頭から読まずに、パラパラとめくって、
最初に読み進めたのは「坂本夏男先生の思い出」という項でした。
そこに描かれているのは、
田舎の学生政治運動家としての血気盛んな松浦青年と、
それを諌める穏やかな老先生の姿でした。


また、本書の特徴の一つに、ジャケットデザインの秀逸さがあります。
一見して、ニュー・オーダーの12インチシングルを連想させるような、
ピーター・サヴィルのような意匠が施されています。
とかく、どん臭いものになりがちなウヨ本のデザインにあって、
これは意外な発見です。