『新訳 留魂録』(松浦光修編訳)

自らを燃やした行動者のみが松陰に近づける


前作の『新訳 南洲翁遺訓』と同じく、著者による注釈が加えられている。
松浦教授と他の研究者との違いは、
自ら巨大な敵との政治闘争に身を投じた「行動者」であることだ。

単なる志の熱い若者に過ぎなかった松陰は、
盟友・金子重之助の死や獄中生活を経て覚醒し、
死の間際に悟りの境地に達する。
国体に全てを捧げ、最期まで門弟や同志に心を配り、
処刑の瞬間まで冷静だった松陰の死に様は、
ごく一握りの日本の偉人が実現した「高貴なる死」だった。

松陰の数々の手紙を含め、
本書の内容の全ては、政治運動における教訓であり、
「では現代を生きる我々には、何が出来るのか」
という、読者への問いかけに帰結している。
その先の答えは、我々読者が自分で考えて探さなければならない。



他の書評等との重複を極力避けました。
留魂録自体の解説も、検索をかければ幾らでも出てくるので割愛しました。