(2020 0503)



*[政策・思想]「つくる会」教科書不合格 文科省批判の前に

(『正論』6月号)


ありがちなアジ演説しか無い論壇誌は、随分前に買う気が失せましたが、
「本誌編集部」名義の名文に、久し振りに好奇心を喚起されました。


内容は、教科書制作における編集者の重要性を唱えつつ、
今回不合格となった「つくる会」の教科書は、
僅かな修正を行うことで検定を通す事が出来た、
ということを、例を挙げて丁寧に説明されています。

私は、思ったより「つくる会」に忖度していると思いました。
かつて真部栄一氏が書かれたと言われる論文を、彷彿とさせます。



実は、大学教授などの学者先生の文章作成能力は、決して高くありません。
それを、商業誌に掲載出来るレベルに修正するのは、編集者の仕事です。

教科書でも、執筆者の主張を、
検定の枠の中に出来るだけ上手く詰め込むのは、
編集者の仕事のようです。

現在の「つくる会」の教科書の出版社である「自由社」は、
他の大手出版社などに比べて、
編集者の技術力が低い、と推察出来ます。



以下雑感。



192p 中華人民共和国共産党政権)成立について

「本誌編集部」は、「つくる会」の心情に寄り添いつつ、
現実的な妥協案を示されています。



193p 「894年、右大臣・菅原道真の建言によって」

私は、この表記を見て、
「894年の時点で菅原道真が右大臣だった」と解釈しました。



193p 毛利輝元について「西軍の大将格として徳川家康に敗北」

つくる会」の表記だと、輝元が関ヶ原に参陣していたように読めます。



194p 「聖徳太子は…日本の古代律令国家建設の方向を示した」

教科書は、執筆者の推測や感想文を書き散らす場所ではありません。



195p 「満洲(州にさんずい)」

「州にさんずい」は間違い。「さんずいに州」が正しい。
つくる会おじさんにはともかく、
中学生向けとしては、漢字の教え方は重要です。



195p 「トモダチ作戦」を「ともだち作戦」と誤表記

つくる会』という、70歳過ぎ老人集団のどん臭さ、ダサさが現れている表記。
町内会のちらしのコラムなら許されますが、これは教科書です。



196p 「従軍慰安婦」の表記の復活について

河野談話が取り消されていないことが原因。
河野談話が政府の見解として今も生きているから、

平成26年度に拡充された検定基準」に基づいて、
むしろ従軍慰安婦と表記する方が正しい、という状況になっている。

よって、批判すべきは、
河野談話を否定し新たな用語を定義していない歴代政権であり、
安倍政権を動かすことが出来ていない私達保守人の力不足です。

文科省に責任転嫁する前に、まず自省して、
国民世論の更なる喚起を図るべきです。



197p 「令和→■■」

これは「つくる会」に分がある、と書かれています。






産経新聞社と扶桑社、育鵬社は、様々なしがらみや制約の中で、
保守的で優秀な記者や編集者を、非常に多く輩出して来ました。
今回の論文の執筆者も、そのような方々に連なる方なのだと思います。


が、「つくる会」は、事もあろうに、『正論』編集部に圧力をかけ、
匿名執筆者のブロフィールを潰し、その人生ごと叩き潰そうとしています。

つくる会」は、以前にも、同じような言論弾圧を行っています。
彼らは、サラリーマンなど弱い立場の人を狙う習性があります。
それを知っているからこそ、
「正論編集部」は、執筆者を護っているのでしょう。



月刊誌『正論』令和2年6月号に掲載された「正論編集部」論文への抗議声明
http://www.tsukurukai.com/News/index.html#020501news


>今回の検定は「従軍慰安婦」の復活や南京事件の扱いなどで、
>その流れを逆転させる「自虐史観」の復活であるとも主張してきました。

ここまで読解力の無い団体に、教科書を作る資格があるでしょうか。



>そもそも、文科省の指摘に従うといっても、「一発不合格」ですから、
>執筆者側には一切の修正も再申請も認められていないのです。
>だからこその「一発」不合格なのです。
>昨年の11月5日に、405ヶ所の「欠陥個所」をいきなり突きつけられ、
>そのうちの175箇所について反論したにもかかわらず、
>ただの1箇所も認めずに拒否され、不合格が確定したのです。

特に、このくだりは、論理破綻しています。
「突き付けられ」た段階で、適宜修正を行っていれば、
検定を通った可能性が高いので、「一発不合格」とは言えません。