*[政策・思想]『明治維新という大業―"大東亜四百年戦争"のなかで』(松浦光修著)
https://meiseisha.com/2018/10/16/%E6%98%8E%E6%B2%BB%E7%B6%AD%E6%96%B0%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E5%A4%A7%E6%A5%AD%E3%80%80%E5%A4%A7%E6%9D%B1%E4%BA%9C%E5%9B%9B%E7%99%BE%E5%B9%B4%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AE%E3%81%AA/

12月5日の集会で確保。

松浦先生の著書は大体拝読していますが、
最近は、レビューを書ける所まで読み込めていません。

『龍馬の「八策」』のレビューの草稿を書きかけて色々あって放置している中、
新著を手にした訳です。

せっかくなので、今慌てて草稿を継ぎ接ぎしてやっつけで作りました。



*[政策・思想]『龍馬の「八策」維新の核心を解き明かす』(松浦光修著)

https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-83267-8


本書は一言で言うと、
『正論』平成22年11月号の論文『NHK大河「龍馬伝」への大いなる違和感』
を土台に、大幅に加筆したもの、となります。

当該論文は恐らく、保守派によるNHK批判の一環として掲載されたものですが、
戦後レジームによって歪曲された龍馬像を正す、という論旨および結論は、本書でも全く変わっていません。

龍馬の実像を、翻訳者としての著者が、膨大な原典に接して平易に要約して紹介しています。



他の志士と同じく、龍馬もまた、尊王精神に満ちた文武両道の志士であり、
坂本家も代々国学を学んでいた。

そうした「智」の流れ、すなわち1000年以上続く皇朝学国学といった日本を守る為の学問を学び、
代々受け継いできた人々の末裔、思想的な子孫が幕末に決起したのではないか……
といった、松浦氏独特の語り口による「縦軸の繋がり」や「人間ドラマ」は本書でも健在です。
今回は特に、思想家の系譜に重点が置かれています。



個人的に印象に残ったところは3点。


①「エヘンの手紙」にある、現代人が忘れてしまった素朴な自己肯定感。

「すごい先生に認めてもらえた」といってはしゃいでいるような内容の手紙から伝わって来る、
人間らしい素朴な感動、素朴な感情の奔流を、高度に文明化された現代人は、
精神的な退廃の中で失ってしまったのではないだろうか。
敢えて言うなら、自己肯定間を与えるのは、勝海舟のような「偉い先生」であり、
現代人の荒廃の原因があるとすれば、それは現代の「先生」の層が劣化しているからかもしれない。


福澤諭吉の短所である「海外かぶれの一神教的価値観の信奉者」という面が、描かれている。

現在でも、慶応大学から派生した人々に時折見られる「違和感」は何故なのか、
という疑問が氷解し、得心した次第です。

福澤が憧れた米国式の大統領制では無く、
権力と権威の分割という日本の国柄に合った
英国式の議院内閣制が採用され、今に至っていることはその象徴と言えます。



岩倉具視が、尊王心溢れる好人物として描かれている。

併せて、以前ここに引用した岩倉具視による孝明天皇毒殺説が、
虚偽の可能性が高いらしいことも付記しておきます。


>12月25日、孝明天皇天然痘により崩御
>政治混乱期の突然の崩御であったためこの崩御には古くから毒殺説があり、
>岩倉が容疑者として疑われたが、俗説の域を出ていない[注 5]。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E5%80%89%E5%85%B7%E8%A6%96

>原口清の『孝明天皇は毒殺されたのか』によると孝明天皇の死因が天然痘であることは
>病理学的にも明白で毒殺はあり得ないとしており、この著作の登場以降、
>多くの歴史学者がこれを支持するようになり、現在では否定説が通説である。