『ゆるゆり なちゅやちゅみ!』上映開始

取り合えず、2回見た時点での感想を。


「作画以外は概ね良好。だが作画は、OVAとしてはかなり厳しい」



☆作画


○顔は、「縦長に開いた時の口」の違和感を除けば、概ね出来は良い。


○バストアップは、大体出来が良い。


●全身像の等身が高過ぎる。

顔は丸く可愛く描かれているのに、体だけが細長くヒョロヒョロなので、
スクリーンのアスペクト比が原因では無い。
等身は全体的に狂っているので、後から修正も出来ません。


●「女体の質感」が足りない。

たとえ着衣姿でも、常に魅力的な裸体の曲線を意識していないと、絵に質感が出てきません。
原因は、女性客に媚びるあまり、男性向けの女体描写を軽視したことにあるのではないか。
最近の京アニに似た企業病かもしれません。

それが最も顕著に出ているのは「ふともも」の描写です。
動画工房版だけでなく原作の絵柄でも、露出している腕や脚は、質感が良く出ています。


●カメラを引いた時に作画が崩れる。

半端に引いた視点で多数のキャラクターを描くと、
作画に負担がかかる上に画面がみすぼらしく見えるので「完全な禁じ手」と言えます。

インタビュー記事を見た限りでは、これは畑監督の失策です。

過去には、資金力に勝るアニプレとA−1が、『アニマス』『夏色キセキ』といった作品で、
同じ失敗を繰り返して、話題になりました。

商業的には、出来の良いバストアップ画像があれば良い。たまに出す全身像には力を入れる。
経営資源の限られた萌えアニメに必要な構図の取り方をして「上手な手抜き」をすれば、
他の萌えアニメを完全に凌駕出来る内容でしたが。


●彩色も、似ているようでかなり違う。

これも『たまゆら』が証明済みですが、
自然を舞台にしたディテールの細かい背景が、諸刃の剣になったのかもしれません。
画面に落ち着きや高級感を与える一方で、若さや勢いを殺してしまった。

動画工房の彩色のセンスは凄かった。あのパレットをこのまま墓場行きにするのは非常に惜しい。
スポイトで吸い取って転用する、といったことは出来なかったのか。



☆内容


○最近の日常系萌えアニメに近い感性で、全体をまとめている。

前任者の近作よりは、『きんモザ』『のんのんびより』『ごちうさ』などに近い。
もう後戻りは出来ません。これからは畑監督の時代です。


○キャラ捌きは、ほぼ同時進行の『ガールフレンド(仮)』に近い

「短時間で多数のキャラクターを出す」というクライアントの無茶な要求に見事に応えている。


○原作ネタ以外の箇所は、明らかに質が落ちている。

これは他の誰が脚本を書いてもそうなるので、
大地監督の言われるように「極力オリジナルは入れない」のが正しい。
https://twitter.com/akitaroh/status/533658555522367491


●赤座家の両親が「削除」されている。

あかりとあかねが2人暮らしをしているかのような描写がある。


○横手氏は、インタビュー記事も面白い。



☆音


●映画館を意識した為か、劇伴が大仰で、出しゃばり過ぎている。

(これは以前、PSBも同様の失敗をした)
映画の壮大さと、坦々とした描写が身上の日常系とは、全く相容れません。
前任者より軽快さや若さに欠けた、やや加齢臭の出たBGMでした。


○音響は良い

臨場感は中々のものです。



☆その他

生で「きときと」が見られるかと期待したのだが、見られなかった。
非常に残念です。



☆結論

大分ボリュームが落ちたものの、向日葵のダイナミックな上半身を大画面で見るのは貴重な体験です。
高い女子力が発揮される場面は、劇場の大画面で見るべき。